今回は横浜中華街を中心に活動されている
薬袋 勝代(ミナイ カツヨ)さんをゲストにお招きして、お話を伺いました。
横浜の中の中国に何を感じられているのか。
薬袋さん曰く
 「空に龍が飛んでいる」
という中華街の魅力とは・・・?

 

●プロフィール
◆大貫カメラ歴 西暦1989年から
◆出身地 神奈川県横浜市
◆趣味
仏像観賞
◆所有カメラ ニコンD100,F2,ニコマート
ライカM2,M6

【 薬袋 勝代(ミナイ カツヨ)さんへのインタビュー 】

大貫カメラ
スタッフ

(以後スタッフ)
よろしくお願いします。
薬袋さん こちらこそよろしくお願いします。
スタッフ

薬袋さんは、中華街をメインに撮られているんですか?

薬袋さん ずっと中華街ですね。今は子育てとかで、写真にかかわる時間が少なくなってしまったんですけども、学生時代から中華街が好きでずっと撮っていました。
結婚、出産と撮影する機会が遠退きましたけど、この先できる限り中華街の写真を撮り続けていきたいと思っています。
スタッフ そもそも中華街を撮ろうと思ったきっかけはなんですか?
薬袋さん 住んでいる所が、中華街まで歩いていける距離なんですよ。
近所だからご飯を食べに行く所という感じでしたけど、何か面白いものがあるのだろうと思って通い始めたら、獅子舞に出会ったんですよ。
そうしたらもう止まらなくなってしまって。あの迫力はすごいですよ。
スタッフ お正月などの行事に出てくるんですよね?
薬袋さん そうですね。正月の他にも年間に何回か出てくるんですよ。
スタッフ イベントのときをメインに撮っているんですか?
薬袋さん 今はそうなっちゃいましたね~。でも若い頃はそれこそ毎週土日を利用して中華街に行ってましたよ。写真を撮らないまでも、ブラブラ歩いたりしてましたね。
もう何を見ても面白かったんですよ。町の色は違うわデザインは違うわで、すごくそれが新鮮だったんですよね。
スタッフ なるほど。今、獅子舞というのがあがりましたけども、他にはどんなものを撮っていたんですか?
薬袋さん そうですね、町の中にあるものなら何でもですね。
最初は「あ、これ面白い!」と思ったものとか。
さすがにお店の売り物とかは撮れないんですけどね(笑)
スタッフ はい(笑)
薬袋さん

歩いていて上を見たり横を見たりしていると中国のデザインのお店が並んで、「この神様は一体なんなのだろう」とか「あ、これ家にほしい」とかっていうのが発端で、通ってるうちに「中華街ものすごいじゃん、みんな知ってる?」って写真を撮りはじめたんですね。
で、私写真屋の娘なんですけど、写真屋といってもカメラを販売するんじゃなくて、撮る写真屋さんだったんです。それこそ関東大震災の時代からで、うちの父の伯父が写真屋で写真を撮っては売る通信社だったんですよ。
で、うちの父もそこで働いていて一族みんなが写真屋でした。
幼いころから私の周りにはカメラがいっぱいあって、子供の頃からカメラで遊んでたんですよね。ですが父を早くに亡くしまして商売も辞めることになり、そこから何もなくなったんですけど、私が大学を卒業する頃、就職が迫ってきて、当時は何になるのか相当真剣に考えたようで、私はこのままOLさんになるのかと思うとすごく嫌だったんですよ。
まだ若いうちに何かやりたいことがあったんじゃないのかとか思っていて、今思えばバカだなって思うときもあるんですけど(笑)そこで人生が終わっちゃうように思えて、何かやりたいことってあったんじゃないのって考えたら「カメラ」と思ったんです。
小さいときにおもちゃがわりだったカメラですけど、父が亡くなってからは触れなくなってしまった。カメラは触っておかなければならないのでは!?と思い、一眼レフを下げて撮り始めたんですよ。
これがカメラの撮影の始まりですね。
それから写真を撮りながら就職して1年間で辞めて、まず絵を描くのが好きだったので、1年夜間のデザイン学校に行きました。
その後夜間の写真学校に通い始めたんですよ。
そこで、校長の浜口タカシ先生と出会いました。運命だったんですね。

 

スタッフ 大学を卒業してからカメラを始めて、仕事でもカメラに触れて。
薬袋さん

アルバイトしながら夜間学校に通って、凄い生活費でした。
写真ってお金にならいじゃないですか。営業が上手いわけでもないし、技術もそんなにいっぱいあるわけじゃないので。アルバイトをしながらだったんですけど、もうそのときには、中華街の写真を撮ることを中心にくらしていこうと決めていて中華街の写真を撮るために日々暮らしていました。
アルバイトだから休みが取れて、イベントがあればすぐに中華街に出て写真を撮ってました。

スタッフ 私も何度か中華街には行ったことがありますけども何か違いますよね。
薬袋さん 中華街は入ると風が違うんですよ。
よくそういう風に言う方がいますけど、そうだと思うんですよ。
横浜の中華街って凄く不思議なんですよ。風が和やかでぽかぽか。
不思議な世界。
あそこの空には龍が飛んでいるとかね、若い頃は言ってましたね。
今思えばなに言ってんだろうと思いつつ今だにそう思ってますよ。
かなりこっぱずかしいですね。
スタッフ 中華街のそういったところに魅せられていたわけですね。
薬袋さん ええ、いまでも当然好きですね。
いまは生活が忙しくなっちゃってあまりいけなくなっちゃいましたけど。
スタッフ 薬袋さんなりの歩き方は何か違うんでしょうかね?
薬袋さん いえ普通の人と同じですよ。
お腹減ったら甘栗を試食したりとか。若い時に好きだったのは、食べながら街を歩くの。
店先で、おまんじゅうとかテイクアウトの揚げ菓子とかよく売ってるでしょ。
ああいうのって子供が食べる駄菓子みたいなものなんですって。
それで、そういうお気に入りの美味しいものをみつけると喜んで、食べながら街を歩いて写真撮ってました。
でもお店でもちゃんと食べてましたけど。
スタッフ なるほど。楽しみながらですね。
薬袋さん うん、面白かった。ほかにやること無かったのかな(笑)
スタッフ いままで、中華街で何枚くらい写真を撮ったんですか?
薬袋さん 覚えてない。数えたこともない。もう数え切れない。
大学の4年の春ですよ「中華街!」って目覚めたのは。
何年くらい撮りつづけてるかな。だから15、6年は撮ってます。ひょっとして祝20周年!?
スタッフ 一度行くと何枚位撮ります?
薬袋さん イベントだったら凄いですよ。コンパクトフラッシュを7GB持っていって撮りきっちゃうもん。D100のJpegで1GBで300枚くらいかな。最低4GBは撮ってくる。
4GBで足りないって大騒ぎして最近は5、6GBが平均ですかね。5、6GB×300枚ですから・・・
スタッフ 1500枚~1800枚位ですかね。
薬袋さん デジタルって知らないうちに増えますよね。銀塩の比じゃないよね?
銀塩のときは20本位撮ってました。
街を歩いているときは5本位で、遊びに行ったときは遊びが優先になりますから3本位でしたけど、何にしても沢山撮ってたことは間違いないですね。

 

スタッフ 銀塩とデジタルの使い分けはどういうところにあるんでしょうか?
薬袋さん

私の中で写真は作品として撮ったり発表のために撮ったりで、もはや趣味でなくなってしまったんですよ。で、銀塩では撮れないものがデジタルだと撮れるんです。
まっくらな中でも高感度にすると今まで撮れなかったものが撮れるんですよ。
そういう便利さがあるので、中華街において個人的に作品として残しておきたいものに関してはデジタルで撮ってますね。
撮れないものも撮れますし、便利だし、失敗も無いし、枚数もいけますし。中華街以外の場合、近所の散歩とかはライカで撮るはずだったんですけど、子供つれて歩いているととてもじゃないけど持てないので専らコンパクトデジカメになってます(笑)本来は使い分けるはずだったんですけど。
ライカを使いはじめたのは最近です。
それまではカメラはすべてニコンでバリバリのニコン党です。
今は中華街の作品作りにはニコンのデジタル一眼でお楽しみがライカです。
あ、それと私はニコンのD100を使っているんですけどー、Jpegで撮影して、レタッチとか画像処理をしないで、撮りっぱなしのデータをそのまんま大貫さんに持ってくれば全紙でコンテストに出せるプリントをしてもらえるんです。すごいですよね。
デジタルでも十分全紙にプリントができるんだということがわかったので、メインの撮影を銀塩からデジタルにかえました。
だから、私のデジタル生活は大貫カメラさんがあって成り立っています。
なんか、ヨイショしすぎ?でも本当なんですよ。銀塩からデジタルに変えた時、随分と神奈川二科の先生方にもプリントできるのかと心配していただいたんですが、大貫さんのプリントを見せたら、大丈夫だったんですから。

スタッフ ライカを使ってみてどんな印象を受けましたか?
薬袋さん 不思議なカメラだな~と思った。やっぱり古いレンズなんだね。
中華街でも使ってみたんですけど、色合いがシブ~い感じで。
ずっとデジタルを使ってたからかもしれないですけど、中華街は派手でしょ?
それがライカだと、しっとりしちゃうんですよ。
私は歳とってるんで最近の歌手を知らないんですけど、私の年代でいえば、デジタルがユーミンでライカを持ってると中島みゆきになっちゃうみたいな(笑)
スタッフ わかりますわかります(笑)技法を含めて薬袋さんなりの撮りかたってあります?
薬袋さん 私ってねこだわりとか何も無いんですよ。先入観がまず無いんですね。
先入観が無いから何でも見るものを信じる人で、だまされやすいんですよ(笑)。
でもその先入観が無いから良いと思ってます。こうだときめつけがないですから。
それで写真撮る時も構図なんかは雑誌とかで「こういうのかっこいいな」とかあるでしょう?気が付くとそれに当てはめようとしているんですね。
これは~調だとか思いながら。先入観が無い分、良いと思ったものの真似をしてました。
そういう時期がずいぶんありました。真似することは良いと思いますね。
でも、ある時に思ったんです。
だいたい、中華街で獅子を撮ったりする時は獅子の動きは早いし、人は多いから、考えてると人の迷惑になるだけだし。
だからその獅子の動きや街のムードっていうか、風の流れ、人の流れの中に自分を置いてカメラを持ってファインダーをのぞく。
あとは、体の動くまま自由にしてみようと。
体の思うままというか勝手に自然にシャッターをきっていこうと。
でもね、それってすっごく大変な事だと思うの。
とっさにカメラかまえてシャッターきるのって、その瞬間にファインダーの四隅を見てフレーシングしなくちゃいけないんだもん。
これって基礎が身についていて自然と出てこないとできないでしょ。大変なの。
でもね、頭で撮らないで体で撮るのって、なんか人柄とかその人の心の持ちようが出るような気がするので、いつも自分の人間性を高く持ちたいと願ってます。
子供が急に釘付けになって「あっ!」って言ったりしますよね。そんな感覚です。
だから何にも考えないで撮ってるってよく言われるんですよ。
それが良いか悪いかはわかりませんけども、何も考えてないということは要するにあまり行動を考えてないってことでしょ?こういったことをしようとか。
本当は撮る前に考えたほうがいいのかなって思ったりもしましたけど、そういう癖が無いんですよね。だいたい私、こまかいことできないし。
つまり中華街にいる時だけは体が感覚で動けるように日々訓練してるのー。
撮影の前には悩むだけ悩んで考えて苦しむけど、現場に行くと頭の中は真っ白って感じかなー。これじゃなんにもなってないじゃんね。
スタッフ 動物的な直感ですね。
薬袋さん

でもそこで、一呼吸置いて考えたら絶対良いんだろうねって思うんですけど、でも獅子を見ると好きだから気持ちのテンションあがってしまって。
冷静な目が持てないんですね。

スタッフ 獅子舞が一番好きなんですか?
薬袋さん 獅子大好き。凄いんですよ感動しますよ。
獅子は高いところから飛んだりとかアクロバットをしたりするんです。
中華街の方々の獅子の練習は夜の11時過ぎとかに始めるんですって。
仕事が終ってから深夜に練習をするんですって。
だから大舞台でやってるのを見るとすごい感動するよ。
私もあの感動を共に!!という気持ちでカメラを持ってファインダーごしに一緒に感動を味あわせてもらってるんです。
カメラを持ちながら一緒になって興奮して「あ、そこだ!」とか凄い技を繰り出してくると涙目になりながら「おお、すごい!」とか言いながら。
スタッフ 一緒に踊っているような感じですね。
薬袋さん まぁ、きっとそうなんでしょうけど。
考えてない(笑)撮ってるときってみんなもうちょっと冷静なんでしょうかね?

 

スタッフ 色んな方の話を聞くとその方によってこだわりが違いますよね。
ただ、薬袋さんの場合は獅子を踊っている方を退いて撮るというよりは、一緒になって参加しながら撮ってる感覚ですよね。
薬袋さん 一緒に参加したいんでしょうね。みんな楽しそうだから。
それに生だからね。何しろ。生が一番ですよ。
スタッフ その躍動感というか迫力というか。
薬袋さん あのね。中華街に行く前ってすごく緊張するの。
うまく撮れるかどうか、こわくて寝れないくらい。
でも最近はね、写真を仕事にしているわけでないから、撮れなくても大丈夫、一緒に楽しめればいいというふうに自分に言い聞かせてます。
スタッフ まあデジタルですし。
薬袋さん そうそう、デジタルなら最初だけ確認しておけば準備OKみたいな。
そういう意味ではデジタルの方が楽しめたかもしれませんね。
銀塩だと心配でちょっと変えとこうかなとか。
またこれは流れを遮るから冷静になれるとこであったりもしますけども。
今思うとね、写真でご飯を食べられないんだけど、仕事にしてたんで、これからの自分の人生考えたらどうやって生きていけば良いのだろうとか、中華街を撮影するっていったって自分が好きだからというだけで勝手に取材をしているだけなので、こんなことを続けててどうなっちゃうんだろうかとか。「このまま私はどうなるのだろう」と凄く自分の生き方を辛いなと思ってたときもあるんです。
その時に使っていたカメラは売れないんですよ。
大貫さんに来ると中古品が多いでしょ?
一度、結婚する前にレンズを売ったんですよ。
安物しか持ってなかったんですけど、安物の売ったレンズをいまだに後悔してるんです。
生きてるのが辛いと思っていた時期をカメラとともに乗り切ったんじゃないか。写真を撮っていたから乗り切れたんじゃないか、と。
会社も辞めてしまったし、当時は今みたいにフリーターというのが無い時代でしたから周りから「働きもしないで何やってるのかしら」と周囲の人からも冷たい目で見られるし、そんなときにカメラを持って中華街を撮っていると珍しかったらしくて、TVとか雑誌の取材が結構来て、それを周囲の人が見てあなたカメラマンだったのねーって、一応世間的には仕事を持ってる普通の人になってたんですよ。
本当は何もしてないただのぷーたろうなのに…。いけないんだけど、精神的にはカメラに助けられました。みんな辛い時って友人とか仲間が支えてくれるでしょ。
私の場合は誰からも理解をしてもらえず、1人でカメラと共に頑張ってたんですよ。(私の場合は)カメラが友達でした。
スタッフ 戦友なわけですね。
薬袋さん そうですね。だからそんな辛い思いを共に過ごしたカメラを売るなんてって。
いまだに後悔してますよ。あんまりいいレンズじゃなかったんですけどね(笑)
「あれ売らなきゃよかったなぁって」それ以来機材売りに出したこと無いです。
スタッフ 全部とってあるんですね。
薬袋さん

ええ。デジタルはD100を使ってるんですけど、発売当初買ったんで、これももう4年目になりますかね。中華街デジタル化ということで以来使ってます。
今では一番の友ですね。どんなに新しい機種が出てもなびかず使い倒すぞーと思ってます。でも、もしD200が出たら考える…(笑)この子(B100)はそんなに辛い思いの時に買ったカメラじゃないんですけど、中華街を共に戦い抜いてくれている友だから大切にしたい。
うー。つまり私の人生って中華街と写真で成り立っているから、これまで使ってきたカメラって私の人生そのものなのー。いろんな思い出もつまってるしね。

 

スタッフ 今後も仲間たちと一緒に中華街を撮っていくということですね。これからカメラとか写真の世界を始められる方たちに、薬袋さんの方からアドバイスがあれば。
薬袋さん 写真の世界?ライカの世界(笑)?
スタッフ どちらでも(笑)ライカの世界でも。
薬袋さん ライカの世界は…あまり語れないんですけど、いや大貫さんを褒めるわけじゃないんですけど、私はライカを知らなかったし、レンズの名前も知らなかったんですけど。
何かのきっかけでM6の中古をすすめられて買ったんです。
以来、お店の人の説明がうまいのでいろいろ教えてもらって詳しくなりました。
カメラって今女の子の間で流行ってるのよね。デジカメ持ったりとか。
スタッフ 今みんな持ってますよね。 
薬袋さん で、これから始める人にというのは…言わないほうがいいと思うよ?好きなら自分で始めると思うから。
今の若い人は既定の概念がないからなんでもありでしょ?
若い人の感覚に、年寄りの私なんかは出る幕がありませんよ。
まあでも、ちょっと堅く言うのであれば、たとえばコンテストに出品するとかですね。
こういうのをお考えであればよき指導者につく事ですね。
やっぱり、先生との繋がりって大切だし、私がこれだけ長く中華街を撮り続けたり、ずっと写真に関わってこれたのは浜口先生に出会ったからだと思う。結局それが無かったらここまでやってなかったと思う。
何も知らないで大学を卒業して、周りの人や先生や中華街の方々にここまで育ててもらったんだと思う。写真を撮るのも人間性だと思うので、日々精進、コンテストで上位入選じゃなくて人間として上を目指す!!と私は思ってます。
写真クラブに入って先生に見てもらうというのも勉強になりますね。
スタッフ 薬袋さんなりの楽しみ方は、結局いい写真を撮ろうとかこだわる必要は無いということですかね?

 

薬袋さん でもね、一番辛かったときに「あんたは何を一番したいんだ?」と考えたんです。
そしたら何か良いことあったらいいなとか、仕事来たらいいなとかそんなんじゃなくて、「最高にいい写真が撮れるようになりたい」ということが最大の目標だと気がついたんです。
それにあたって何をするべきか、何が必要か?いい写真を撮るために生きているんだ、写真のコンテストで一等賞を撮るためとか仕事の依頼をもらうために生きているわけじゃない。何のためか、他人から評価を受けるのもいいけども、いい写真を撮ることを一生の目的にしているんだと。
いい写真は偶然撮れちゃうこともあるだろうけど、常にその質を維持して撮りつづけることって難しいじゃない?今日明日いいものを撮るとかじゃなくて、良い写真にたどり着くまでにはどう年齢を重ねていくかが大問題だなと思うんです。
そんなときに、自分が60、70、80歳になったときに、二科の先生方のような目になれたら良いなと思ったんですよ。目が違うんですよね。別に変な意味じゃないんですよ(笑)
「自分が年をとったときにああいう目になりたいな」と思うんです。目標なんですよ。
私にとって必要なものは何かと考えたら、若いときに先生のようになりたいと思ってた純粋な気持ちだったりもしたの。なにしろ目標達成の為には自分を磨かなければならないと。
ちょっとねたんでみたりしては作品に出るのではないかと思ってますから。
自分を磨きながら写真を撮り続けて精進して、年配になって先生のような目になり~の、いい写真も撮れるようになれてたらいいなと。かなわないよなって思いますけどね(笑)。
でもそう目標を立ててる。
スタッフ 写真を通してただ単にいい写真を撮りたいと思うだけじゃなくて、そうなるために人間性を磨くとか、人間としても成長していくようなものなんじゃないかなと。
薬袋さん

うん、そうですね。人間性も必要なんじゃないかなと思ってるんで。
そう、何の気なしにパシッとと撮ってみると意外といいのが撮れたりしますんで、何とも言えないんですけどやっぱり人間性のところが重要に思いますね。
私は仏像観賞も趣味なんですけど、写真を見るのと同じだなと思います。
仏像の形って人の形をしてますからぱっと見るのは簡単なんだけど、そこから先って大変でしょ?ぱっと見でやさしい仏様だなとか観音様だなとか感じることはできるんですけど…。仏像を見てて、これまでは形で見てたんですよ。
この仏像は何時代のもので何様式でとか本の知識で見てたんですよ。
京都・奈良が好きで年に何回も行っちゃたりするんですけど、何度も何度も同じ仏像を見に行くんですが。何度見てもわからなかったんです。
でも精神的に辛かったときに「あぁ、わかった。これなのかな。」と思いました。
いつもと違ったんですよ。こっちの勝手な思い込みなんですけどね。
1000年前の仏師の人達の作った世界と、それを祈り続けた人達の気持ちが合わさってできるものを、自分が感じられただけで感動しました。あのときは泣けました。ほんとに…。
でもね1000年の歴史の中で仏像を見てそういうことを思う人もいっぱいいたんだろうなって思ったの。私がだんだん歳とって来て回数をこなすうちに何様式とか形で見ることがなくなってわかったんですよ。気持ちで見るというか感じるというか自然なの…。
救ってくれるっていうよりは、受け入れてくれてるんだろうなって感じました。それで、こういうことなんだって思いましたね。それを思っていたら写真を見るのと同じだなって思って。
ほかの芸術も同じだと思うんですが、作品を創作する人と見る人の思いがあると思うんです。その2つの思いが合わさって完成する。それはこちらの見る目を養わなければならないし、精神においても高いところにというか感覚的に優れた方に持っていかないとわからないと思うんですよね。そういうのを含めてわかるようになるといいなって思います。

 

スタッフ 高尚というか高度な世界ですね。いろいろなものを見て欲しいという。
薬袋さん そこから得るものは得て、先入観は取っ払ったほうがいいと思う。
でも基礎は必要だと思うからいい先生について教えてもらうことですよね。
基礎は退屈かもしれませんけどもでも知ってた方が良いと思います。
基礎は体の一部となるくらい自然に身についているといいと思う。
考えなくても出てくるくらいに。
スタッフ ええ、基礎があってこそですからね。
薬袋さん 最初に頭がちがちにして入ってもわからないかもね。
やってて掴むものがあったりしますから。
あとは大貫さんの所に来て話をするとカメラ詳しくなっていいと思う。
うん、そうだよ。全然知らなくてもここ来ると本当に詳しくなる。
スタッフ 突然ですが、大貫カメラ暦は何年になるんですか?
薬袋さん 良くぞ聞いてくれました。といっても何年かわからないんですけど。
相当お世話になってるんで。
専門学校時代、卒業展の写真を大貫さんで焼いてたんですよ。
中華街の写真展をやったときに、写真学校の紹介で大貫カメラさんで全て焼いて、部長さんが全部面倒みてくれて、搬入までお世話になったんです。
スタッフ 今後、個展を開いたりはしないんですか?
薬袋さん ちょっと子供の手が離れるまでは無理かな。
スタッフ お子様の写真とかは?
薬袋さん

って思うでしょう?みんなそういうんだけど、あれお父さんだから撮れるのよ。 きっと。
だって子供ってお母さんと手をつないでるし、手を離すとどこかへ行っちゃうでしょ?
とてもじゃないけどそれでライカ持てない(笑)

 

スタッフ コマーシャルではお母さんが子供の写真を撮るという。
薬袋さん 撮ってるよね。公園とかだったら良いけどそれ以外では怖くて手が離せないじゃない。
土日は主人に抱っこしてもらってカメラ持つようにしたいんですけど、でも買物してるとどうしても荷物が増えるからなー。だからさー写真撮ってないなーってストレスがたまるの。
だから夜な夜なカメラを出してきては、大貫さんで買い物するとサービスでいただくシリコンクロスでカメラ磨いてるのよ。こないだなんてそのままカメラと寝ちゃったの。
でもそれって埃入ってダメなのかな。カメラを使わないとカビちゃうとやだなって思って、家の中に出しっぱなしにしてゴロゴロさせてるので、うちの子はカメラに囲まれて暮らしてますよ。
スタッフ お子様もカメラをやるようになるかもしれませんね。
薬袋さん

わからないけど、今のところはおもちゃですね。

スタッフ ええ。では、もし個展とかあれば情報などを載せたりするかもしれませんので、宜しくお願いします。なにか最後にこれだけは言っておきたいという事はありませんか?
薬袋さん ん~、やっぱり中華街に行こうよ!って感じかな?
回数重ねていくとその度違うし、お店なんかも増えてきてるし、お祭りが無くても面白いよ。中華街は生が一番。だから何度行っても飽きないからね。
昔と違ってキレイになっちゃったからとか、混んでるから嫌だとかいう人多いみたいですけど、変わっていく中華街こそまさに「生」、面白い!!
新しくなっても街にはやっぱり中華街の味はする。
アスファルトから大地の香りはする。楽しいですよ。
スタッフ 是非機会があったら生で中華街を味わってください。ということで。
薬袋さん ぜひ中華街にいらして下さい。
中華街はいつでも人が多い方が活気があって楽しいし、その人1人1人の中華街の楽しみ方があると思うし。そういうみんなの楽しいーが集まってる街だから、中華街って。
私は中華街の人じゃありませんけども(笑) 
スタッフ 今日はどうもありがとうございました。
薬袋さん こちらこそありがとうございました。

 

 

作品、インタビューなど何でも結構ですので、ご感想をお聞かせください。
お待ちしております!
大貫カメラ: ohnuki.c@lily.ocn.ne.jp